よんなな会コラボ企画

8月27日に開催されたよんなな会・内閣府・内閣官房合同オンラインイベントに、昨年の地方創生☆政策アイデアコンテスト「地方公共団体の部」の受賞者3名に登壇いただき、RESASの使い方やコンテストに参加した経緯などについてお話を伺いました。

永本恭平(えのもときょうへい)氏  
京都府亀岡市
南賀銀次(なんがぎんじ)氏     
徳島県(現在は出向元の那賀町に帰任)
灰谷貴光(はいやたかみつ)氏    
石川県能登町

1.「藍染めと花のコラボレーションによる地域農業の活性化」
徳島県那賀町の南賀さん

脇 :今回のプレゼンのタイトルは「自分のまちの強い産業を知る」ということですが、実際に何をされたのですか?

南賀:徳島県那賀町で作られているコワニーという花をどうやって売るかというアイデアです。農業振興課にいたときに、零細農家が多い、生産者が高齢化しているという町の農業の実態について、漠然と考えていました。それをRESASの農産物販売金額帯別の経営体の割合、農業経営者の年齢構成、那賀町全体の農業産出額に占める花・お米・野菜等の割合を使って、自分の経験や勘を実際にデータで確認することで裏付けし、アイデアとして昇華していきました。

脇 :経営体の割合について、これはどういうデータですか?

南賀:日本の農家は年間売上が100万円に満たない超零細企業が半数を占めています。その中でも徳島県那賀町は突出して100万円未満の割合が大きいです。それは2015年度から変化がなく、慢性的に零細農家が多いことが見て取れ、自分の経験が裏付けされました。

農産物販売金額帯別の経営体の割合
指定地域:徳島県那賀町

脇 :年齢構成のデータについても教えてください

南賀:これを見ると、若い方が少なく、60歳以上や60歳手前の人が半数を占めています。販売金額が少ない上に、高齢化が進んでいるのが那賀町の農業の実態です。44歳未満の人は多分片手で数えられる程度しかいませんね。

農業経営者の年齢構成
指定地域:徳島県那賀町
性別:総数

脇 :次の【品目別 農業産出額】の資料は?

南賀:これは那賀町の農業生産額に占める、花、野菜、果樹の割合を示すグラフです。このデータを見ると今回の題材でもある花が約50%を占めていることが分かります。逆に米は少なくて、花、果樹、野菜がほとんどを占めています。山の中の田んぼなので、お米が作りにくいのですよ。

脇 :このように数字としてはっきりと見えてくるということが重要だったのですか?

南賀:私はデータからアイデアを作ったわけではなく、もともと自分にあったアイデアを進めていくためにRESASを使い、自分のアイデアが見当違いでないかを確認していくような、答え合わせみたいな使い方をしました。

脇 :その答え合わせはすごく大切ですよね。

南賀:そうですね。作り手から売る人まで多くの方にプロジェクトに関わっていただくためにも、自分の感覚ではなく具体的・客観的な根拠を示すことに意味があると思います。

脇 :まさに、南賀さんのように仮説を持っている人にとって、その仮説を裏付ける為の根拠としてRESASは使えますね。ところで、南賀さんはなぜこのコンテストに参加したのですか?

南賀:私は昨年1年間徳島県庁に出向していまして、市町村から徳島県庁に出向している人は毎年このコンテストに応募しているという伝統です。

脇 :伝統なんですね、すごいですね!自分がやりたいと思っていることがあるときに、データを使って何ができるか、というようにやってみると世界が広がっていくのかなという気がします。まずは触れてみるというのがいいと思います。

昨年度の南賀さんのコンテスト資料 ▶

(昨年度のコンテストの様子)

2.「WAKUWAKUの~とコンソーシアム~課題先進地から人材育成先進地へ~」

灰谷:能登は海に面していいて、漁業が盛んな町です。なんとなく漁業いいよねという雰囲気なのですが、データで見ることで皆の意識を変えたいという考えがありました。RESASの付加価値額の大分類を見てみると、製造業より漁業の方が上にきます。これを見ると、役場の職員も驚くことがあります。さらに絞り込んで石川県の水揚げ金額を見ると、能登町が25%を占めていることがわかります。高校生や中学生に話す時に、金沢で魚を食べていても、それは能登の魚だからねと説明し、自分ごととして考えてもらっています。

脇 :誇らしいですね。

灰谷:誇りって重要ですよね。しかし、違うデータを見ると、60歳以上の方々が漁業を支えていることが分かります。10代、20代の働き手はほぼ漁業研修生、外国人の方なのですよ。漁業はノウハウが必要なのですが、ノウハウを持っている人はこのままだと10年後引退し、つなぐ人がいないというのが現実です。石川県の漁業の問題にもつながり、データを使いながら、皆さんに当事者意識を持っていいただくということをデータを使いながら説明しています。あと、人口のデータを見てみると、RESASのデータでは昭和25年から人口減少が始まっています。皆さん人口が減っていくこと自体の認識は持っていますが、データを見せると、こんなんになっているの?と恐怖を感じるようです。25年後は10人に一人が90歳以上になります。このデータは危機感を煽り過ぎるときもありますが、私の場合は問題を明確にして皆で話し合っていきましょう!と言っています。感覚で分かっていることをデータで分析することで、自分ごとにしてもらうことで、その人がこの町で住んでよかったと思える町がどうやったらできるのかを話し合っています。

脇 :そういった誇りを持って欲しいという意図で、灰谷さんは今日そのかっこうなのですか?

灰谷:もちろんです!

脇 :データで見ると、未来予想図が見える。みんな課題解決は難しいと言うけど、何が難しいか、因数分解していくことは大事ですよね。まさに灰谷さんがやられていることは、ぼやっとした課題を「見える化」して共通言語にすることだと感じました。

灰谷:その通りです。ずっと人口減少している地域で、何か気付ないうちに1つ1つ無くなっていくことが当たり前になっている。これをどう解決するかということが考えられるといいなと思います。実際RESASのコンテストに応募する時も、チーム内で同じようなことをやっていくと当事者意識が生まれて、うまく動けました。

脇 :RESASのコンテストに出られたきっかけはなんですか?

灰谷:2018年に徳島の財務事務所と吉野川市役所が大臣賞をとっていたのを見て、北陸財務局とやりましょうとなりました。

脇 :情熱とデータなどの知識を兼ね備えている人が、人を動かせるのでしょうね、まさにそれがRESASの使い方なのかなと思いました。

昨年度の灰谷氏のコンテスト資料 ▶

(昨年度のコンテストの様子)

3.「常識の斜め上をいく かめおか霧の芸術祭」

脇 :プレゼンのタイトルは「まちの課題とやりたいことを掛け算する」について説明をお願いします。

永本:RESASを使ってみようと思った背景ですが、亀岡市では「かめおか霧の芸術祭」というアートの力を活かして地域課題を解決する芸術祭を2018年度から進めています。亀岡市の地域課題は大きく4つあって、「地域経済」「農業」「観光」「環境」をアーティストたちと一緒にアートの力で解決したいというのがはじまりです。霧の芸術祭については、議員から「本当にする必要がある事業なの?」「事業の効果って何?」と聞かれたときに、なかなかうまく説明できないという課題がありました。

脇 :特にこの芸術祭は難しそうですね。

永本:そうなんです。地産地消を考えたとき、亀岡市がどれくらいお金を生み出して、どれくらいのお金が地域外に流出しているのか、データに基づいた説明が不足していて、説得力に欠ける部分ありました。京野菜の7割が亀岡市で生産されているのに農業衰退の危機にあるなど、実情をデータでとらえ、見直すことが必要でした。そこで、地方創生の1つとしてこの芸術祭は必要であるという説明をするために、まずRESASを使ってみようと思ったのが背景です。

脇 :どのような分析をしたのですか?

永本:実際参考にしたデータは、人口構成の推移や年間の消費の販売額です。RESASで見た人口構成の推移で、実績値、推計値を見られます。工業製品出荷額・年間商品販売額も人口規模も京都府内第3位とはいえ、人口規模に見合ったお金を生み出していないことが分かります。昼夜間人口比率では、亀岡市の人口が日中どれくらいの割合で地域外にでているかが分かります。亀岡市の13.6%の人は、日中は京都市に滞在しています。また、休日も亀岡市の人は亀岡市にいません。RESASの地域経済循環図は、地域経済循環率が70.8%と低いですが、これは亀岡市の生み出したお金が7割しか生産支出に回せていないことを意味しています。

脇 :これはすごく大事なデータですね!地方創生のためにお金を使っているが、そのお金は本当に地域に回っているの?とはよく言われますよね。

永本:(実際にRESASの地域経済循環マップを共有)先ほどの昼夜間人口のデータだけでは地域外にお金が流出しているとは言い切れないのですが、この地域経済循環図を見るとやっぱりそうだったんだねということが分かります。

脇 :実際にRESASを使ってみてどうでしたか?

永本:亀岡市が京都のベットタウンであることは知られていますが、実際どれくらいの割合で京都に通学、出勤しているか、意外と聞いてみると分からなかったりします。それをRESASでしっかり数字として見られるのはよいなと感じました。

脇 :ところで、素敵な衣装ですね!

永本:このシャツは霧の芸術祭をイメージしたデザインで、アーティストの方に実際お金を払って作っていただいたものです。様々なアーティストが集まったマーケットを作って亀岡市民だけでなく、地域外の方々にも来ていただいてお金を落としていただくという地域ビジネスを確立しつつあります。

脇 :数字をもっていろいろな人を巻き込んでいくというのは、今日の共通していることだと感じました。自分たちが持っている仮説を数値化していくことで、色んな人たちが当たり前と思っていることを可視化していくことが、データの持つ強みなのかなと思いました。

昨年度の永本さんのコンテスト資料 ▶

(昨年度のコンテストの様子)

3人の説明によると、まず仮説があってデータを分析しているパターンと、データを分析するところから始めて問題意識を深めるパターンの両方がありました。また、3人に共通していることとして、プロジェクトの協力者や議員のようなステークホルダーを説得し、動かすためにデータが有用であったということが印象的でした。
今回のイベントでは、応募して約3日で定員の100名の応募があり、RESAS、地方創生☆政策アイデアコンテストに対し非常に興味を持っていいただいていることが分かりました。皆さんもまずは、RESASに触れていただき、自身の地域の現状を確認して、地域課題の解決やアイデアコンテストへの応募に興味を持っていただければ嬉しいです。

【イベントの様子】

内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局
内閣府 地方創生推進事務局 ビッグデータチーム