地方公共団体の部 渡辺 美智子さん
慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科 教授
統計科学、多変量解析などが専門。
著書『今日から役立つ統計学の教科書』など多数。
――渡辺先生は、大学で統計学を教えておられますが、データ分析の意義や魅力は何だとお考えでしょうか?
データ分析というと、数学のように数字を色々操るから難しいという印象があると思いますが、データにはそれが取られた社会背景、コンテクスト(文脈)と言いますが、事実があるわけです。データ分析を通して、気が付かなかった事実が一つ一つ見えてくる。その事実と事実をつなぎ合わせて、推測をしていく。海外ではデータ探偵といって、学校教育でその魅力が伝えられていますが、シャーロック・ホームズのようにデータでストーリーを作り上げていくところが多分一番面白いと思います。
――RESASなどでデータ分析をするための力を身につける方法があれば教えて下さい。
データ分析で一番大事なことは、どのような仮説を持っているかということです。分析の手法とデータがあれば何かができるということではないので、自分が今何をやりたいのか、どんな仮説をデータによって検証したいのか、ということが、はっきりとしていないといけません。そのためには、身の回りの出来事をどうやったら改善できるのか、今何が不十分なのかということに、常に興味を持っておくことが大事です。
――過去にもアイデアコンテストの審査員をお務めいただきましたが、それに限らず色々なアイデアに触れる中で、印象に残っているアイデアや分析手法を教えて下さい。
印象に残っているのは、一昨年度の高校生・中学生以下の部門の、小学5年生の女子児童2人の、福島の商店街の活性化させるために私たちができること、というものです。しっかりRESASを使って分析をしているところも良かったですが、1番大事なことは数字に落とし込むと逆に見えなくなることもある中で、彼女たちは、商店街の人たちがどういう生の課題意識を持っているかを実際にインタビューに行きました。例えば、商店街を活性化させるためには、単に来てくれる人の数だけ、統計の数字だけを考えてしまうと、どういう人たちに来てほしいのか、どういう賑わいを商店街の人たちが望んでいるのか、そこにギャップが出てくることもあると思います。
だけど、彼女たちはきちんとインタビューに行って、そこの商店街の方々が、自分たち子どもたちと触れ合うことをとても楽しみにしている、ということをきちんと感じ取って、自分たち子どもたちも一緒に楽しめるためのアイデアに持って行ったというところが、大変良かったと思います。
――今年も審査員をお務めいただきますが、応募者に対して何かアドバイスをお願いいたします。また、RESASについてお勧めの使い方や分析手法があれば教えて下さい。
地方を活性化、創生させるためのアイデアには色々な切り口がありますが、ソサエティ5.0と言われる中で、テクノロジーをどれだけ使って私たちの世界を変えていけるのか、ということが重要だと思っています。そのような意味では、あっと驚く未来を感じさせてくれるアイデアや、地方創生の方法を期待しています。
具体的にRESASをどのように使えばよいかということについては、基本的には自分たちの提案にどう数字やデータを乗せて説得力を持たせるのか、ということだと思います。特に、地図上に地域を意識してデータを乗せる。そして、ただ1つの統計地図だけではなく、色々な指標と指標の関係性で改善の提案を見せていただくのを楽しみにしています。
――最後に、応募を検討している方に対して、応援のメッセージをお願いいたします。
地方創生は、そこに住んでいる人たちの想いが重要です。地方を愛し、それを全国もしくは世界に発信できるような人材が、このコンテストで育ってくれたらいいなと思いますので、是非色んな視点でチャレンジしていただければと思います。