全国審査員メッセージ

東 修平さん

地方公共団体の部 東 修平さん

四條畷市長
四條畷市長として、IoT技術を用いた
「登下校見守りサービス」など先進的な取組を実践。


――地方公務員の方にとって、コンテストに応募するとどのようないいことがありますか。

地方公務員、特に市役所の職員は、日々の業務に追われているのが実態です。でも、自分に与えられた職務を全うする中で、こういう視点を入れて政策を進めた方がいいとか、うちのまちにはこんな取組が必要では、と思っている方もたくさんいると思います。どうしても自分の所掌内で仕事するのが公務員ですから、一歩を踏み出せないことはあると思いますが、このコンテストに思い切って応募してみることで、普段自分の思っていること、やろうとしていることを具体化できます。そして、それを外部の有識者や、私を含む様々な審査員の目線で見て、これはいい案だと認められるものを作れれば、今後、ご自身の職場でプロジェクトを立ち上げてやっていく際に、思い切った後押しになると思います。

また、このコンテスト自体が地方創生の担当部局の方々のご尽力で実施されており、いざ実行フェーズに入っても、有識者の方を含めて様々なバックアップを受けられると思います。庁内での実行可能性も上がり、かつ実行後の実現可能性も上がっていくという意味で、本コンテストに応募する意義は非常に大きいと思います。

もし万が一、受賞や実現に至らなくても、RESASなどを活用したデータ分析は、今後ますます重要になるので、その経験自体が今後の職務で非常に活きると思います。これからの地方公務員に求められているのは、データをしっかりと理解し、分析して、本当に必要なところに投資をしていける職員です。いい結果にならなくても、RESASなどを活用した分析力が自分のスキルとして残るという意味でも、応募する意義が大きいコンテストだと思っています。

――では、応募するに当たり、どのような観点で作るのがよいか、アドバイスをお願いします。

大きく分けて3つあると思っています。

1点目は、こうしたコンテストでは、できそうなこと・やれそうなことを提案する方が多いのですが、私が大事だと思うのは、やらないといけないこと、そのまちが本当に必要としていることを提案することです。やらないといけないのに実現できてないことは、かなりの障壁があるはずで、それは人の問題かもしれないし、お金の問題かもしれないし、制度の問題かもしれない。やらないといけないことを気楽にドーンとぶち上げ、何が壁になるかを整理することが真に必要だと思います。実行できることだけやってしまうと、やっているうちは楽しいのですが、終わった後に何が残ったのかということにどうしてもなってしまう。大きなものに立ち向かって、課題をまず出すことが重要です。課題が整理されれば、個別アプローチでその課題を1個ずつ撃破していけますので、まず大きく描いて、かつ本当に必要なものを提案することを考えていただきたいです。

その上で、2点目として、一番生々しくて現実的な話をすると、資金面をどうするか。成功している地方創生の取組は、ここがうまいです。何らかの形で最大瞬間風速的に資金を得ても、継続しないと何にもなりません。結局、利益を得て、投資をできるという状態、経済が回っている状態をいかに作り出すか。このエッセンスをアイデアの中に含めて欲しいです。例えば、この取組があれば観光客が何人くらい増え、飲食・宿泊でいくら稼げると計算ができるはずです。概数でも、それをどれだけ見込めるのか、それが一時的に下がったら何で補填するのか、という簡単な計算でもいいので、現状分析だけでなく将来分析が入っていると、非常に有効なアイデアになると思います。

もう1点は、応募アイデアを実行していくに当たっては、体制が非常に大事です。これは資金も関わりますが、もはや地方公共団体だけで解決できることは限られていて、予算を役所として割けていないけれども、まちとしてやらないといけないこと、これをどうやっていくのか。商工業者、地銀、国の出先機関、農業従事者、子育て支援団体など、どのプレーヤーと組んでやっていくかというのを考えてもらいたいです。ただし、アイデアができあがってから声をかけても、一緒に作り上げてないので共感があまり得られません。アイデアを練っていくときから、それぞれの主体と話し合い、ああでもない、こうでもない、と作り上げていくことが必要だと思います。一方、船頭が多すぎると、あっちに行こうか、こっちに行こうかとブレてしまうので、コアとなるコンセプトだけは少数でしっかりと決めたうえで、どうしていったらいいか様々なアイデアを広げていく。コアと実行それぞれ段階の2段階に分けた体制について、応募段階で具体的なものは難しくても、座組のイメージだけでもあると、一気に実現可能性が増すので、そのあたりを期待したいと思います。

――最後に、応募を考えておられる地方公共団体の職員の方に、メッセージをお願いします。

普段、職員として働いていて、なかなかアイデアコンテストの準備をする時間がないと思ってしまう方もいるかもしれません。通常の仕事も大事なのですが、このアイデアコンテストへの応募は長い期間をかけてやるわけではなく、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月のことなので、まずちょっとでも興味を持った人は、思い切って、挑戦すると決めてしまってほしいと思います。週に何分、何時間か、取れそうな時間を先に決めてしまって、必ず応募する。まず応募してしまってから悩めばいいと思います。決勝(最終審査会)に進めば、さらにブラッシュアップできると聞いているので、まずは出す、その上で、走りながら考える。そして、職員としての想いを込めて応募してくれたら嬉しいなと思います。頑張ってください。