浦崎 太郎さん

高校生・中学生以下の部

大正大学 地域創生学部 地域創生学科 教授

浦崎 太郎さん

専門領域:教育学、社会学
研究分野:高校改革の支援を通じた地方創生

地方創生を考える上で最も重要な視点は「価値創造」だと思う。伝統的な農耕社会では、一年をサイクルとして先祖伝来の営みを繰り返していればよかった。明治に始まった工業社会では、規格品を大量生産するために「忍耐強く」「言われたことを速く正確に」遂行できる態度や能力が重宝された。しかし残念ながら、インターネットの普及に伴う情報社会の到来によって、もはやそれでは立ちゆかなくなった。社会の変化が激しく、日々「世界規模での知恵比べ」が迫られている今日、新たな価値を創出しつづける力がない限り、経済的な優位性を保っていくのは難しい。そうした時代の変化に対応できなかった結果として顕在化したのが、地方の衰退と考えられるのだ。
では、価値創造に必要な作法は何か。それは“三人寄れば文殊の知恵”あるいは“強みの掛け算”だろう。そしてそのためには、個人レベルでも地域レベルでも、自分の強みを正確に把握することが重要になる。その際、自己認識とは必ずしも当てにならないもので、自分と他者を相対化することが期待される。そこで有用になるのが、RESAS等のデータだという訳だ。
実は、私は前職の高校教員時代から、高校生が地域課題との関わりを通して将来を描くキャリア教育の普及に努めてきた。そして近年、たしかにそうした教育活動を導入する高校は増え、地域でアクションを起こす高校生は珍しい存在ではなくなった。ただ、生徒が地域でアクションを起こすだけがゴールならば、学校教育の一環として実施する価値は低いと思う。その面で今後さらなる改善の余地があるとすれば、それはデータを活用した企画や実践だと考えている。RESAS等を駆使することで、自分が住む地域の強みや弱みが明確になり、何に磨きをかけ、誰と組んで弱みを補えばよいかに留意しつつ、より高い価値を創造していけるアイデアを構想できるはずなのだ。また、数字に立脚することで、仮説の形成や検証をより緻密に進めていける道も広がる。それは、新・学習指導要領で謳われている資質・能力の三本柱の一つ「知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」を具現化していける道の一つということができ、高校が教育課程に位置づけて組織的・計画的に実施する必然性が高まる。その先、地方創生を力強く進めていける可能性も広がる。
こうした立場から、地方創生☆政策アイデアコンテストには大いに期待している。その価値を一人でも多くの関係者が共有し、コンテストで切磋琢磨する若者が増えることを願ってやまない。