受賞者インタビュー

過去受賞者に、本コンテストへ応募したきっかけや受賞後の活動についてお話を伺いました。
今年度応募を考えていらっしゃる方は是非ご参考にしてください。

地方創生☆政策アイデアコンテスト2020
大学生・一般の部 地方創生担当大臣賞受賞チーム

「古民家上手プロジェクトチーム」
~空き家が繋ぐ人と未来 空き家を利用した共生社会構築への挑戦
島根県松江市持田町の事例を踏まえて~

地方創生☆政策アイデアコンテストは、地域経済分析システム(RESAS:リーサス)やV-RESASを活用した課題分析に基づくさまざまな政策アイデアを募集しています。

2020年度の大学生以上一般の部において地方創生担当大臣賞を受賞したのは、島根大学出身の橋本友太さん・佐藤和輝さんと島根大学国際交流センターの青晴海教授による「古民家上手プロジェクトチーム」です。

今回は、地域の空き家を活用した混住シェアハウスを通して地域の拠点創出に取り組む橋本友太さん・佐藤和輝さんのお二人に、本コンテストへ応募したきっかけや受賞後の活動についてお話を伺いました。

「古民家上手」のこれまでの活動

――古民家上手(わて)の発起人は佐藤さんとのことですが、活動を始めたきっかけは何でしたか?

佐藤「古民家上手は、私がまだ島根大生だった2017年にスタートしました。もともと地方づくりや国際交流などに興味を持っており、留学生の孤立・空き家問題・地域の過疎化によるコミュニティの衰退という3つの課題に着目したのがきっかけです。」

――その3つの課題を解決するため、どのようなことから活動を始めていったのでしょうか?

佐藤「最初は私が一人で、自転車で地域を回って『空き家を使わせてもらえませんか?』とお話しするところから始めました。幸い、松江市持田地区の自治会長さんと古民家のオーナーさんとご縁があり、一軒の古民家をお借りすることができました。」

島根大学国際交流センターの職員であり、シェアハウスに暮らす仲間でもある青晴海教授も含め、4人でプロジェクトがスタート。築150年ほどの古民家をリノベーションし、地域住民・若者・外国人をつなぐ「古民家上手」が完成しました。

――活動初期にはどんな苦労がありましたか?

佐藤「外国人があまり訪れない地域なので、留学生たちがなじむまでに時間がかかったり、島根大学から資金面でのバックアップが得られなかったりと大変なこともありました。でも、橋本さんをはじめとする島根大学の学生有志や、元留学生で島根にIターンしたフランス人のサシャさんもメンバーに加わり、任意団体としてさまざまな交流イベントを行っています。」
――コロナ禍の影響もあり島根大学に来る留学生は減っているそうですが、今は主にどのような活動をされているのか教えてください。

橋本「毎月1回開催している『子ども地球きょうしつ』では、地域の子どもたちを対象として国際交流の場を設けたり、自然や環境を思いやるきっかけとなる体験を提供したりしています。『クリケット普及活動』や『中国語教室』は、海外から島根大学に来ている研究者や留学生たちが主体となって続けている活動です。」

2020年5月には、コロナ禍で苦境に立たされる学生や留学生に向けて、地元農家さんに提供していただいた農産物や食料品などを配布する拠点にもなりました。古民家上手は、地域の交流拠点としての役割を担い続けています。

地方創生☆政策アイデアコンテスト2020へ応募したきっかけ

――地方創生☆政策アイデアコンテストに応募する前から精力的に活動してこられたのですね。本コンテストを知ったきっかけは何ですか?

橋本「昨年の9月頃に、青教授から教えていただきました。活動から3年目となる2020年にこのコンテストに応募したのは、これまで勢いで推し進めてきた活動を振り返る、いい機会だと思ったからです。我々の活動の総括として、客観的な評価とフィードバックを得られたらいいなと思いました。」

橋本さんが中心となり、まずは中国ブロックの地方審査通過を目指しました。過去の活動実績をまとめた冊子やホームページを元に、佐藤さんや青教授も交えてPowerPointでスライド形式の資料をまとめたそうです。

――地域経済分析システム(RESAS:リーサス)を知ったのは、そのときが初めてでしたか?

橋本「はい。応募資料を作成する過程でRESASを活用しました。ほかの地域と比較しながら、松江市の現状を可視化できたのはありがたかったです。総人口の変化や人口の流出など、発表には使わなかったデータも島根県の全体像を把握するのに必要でしたし、RESASには載っていなかった外国人人口や空き家の増加傾向も統計的に相関がありそうだと推測できました。有効に使えたと感じています。」

佐藤「現在も空き家を大学寮とする事業について関係各所と交渉中ですが、RESASのデータはエビデンスとして役立っていると感じます。私は今、地方創生に関する仕事にも関わっていますが、そこでもRESASを活用しています。」

地方審査を通過した後は、全国第一次審査および最終審査に向けて資料をさらにブラッシュアップしていきました。企業のトップや大学教授などの有識者からなる地方審査員からのフィードバックを取り入れつつ、持続的な取り組みが可能になるよう経営面でのアイデアについて具体性を強化していったそうです。その結果、2020年度の大学生以上一般の部においてみごと地方創生担当大臣賞を受賞しました。

地方創生担当大臣賞受賞後の活動

――受賞をきっかけに、古民家上手の活動に何か変化はありましたか?

橋本「我々の活動をすでに知っていた方や、地域で何か活動をしたいと考えていた方が声をかけてくださる機会が増えましたね。中国語教室もそのひとつです。」

佐藤「受賞前は私たちが主体となってイベントを企画していましたが、受賞後は古民家上手という場所を使って留学生や地域に住む外国人を交えたイベントをやりたいというオファーをいただくようになりました。コンテストでの受賞がそういった方々を集める後押しになったと思います。」

今後、古民家上手プロジェクトチームが目指しているのは、産学官連携によって空き家を大学寮にする事業です。5棟のシェアハウス建設を短期目標に掲げ、他県の先進事例などをもとに大学や地方公共団体などのステークホルダーへの働きかけをすでに始めています。
――本コンテスト受賞者に対しては、実現支援として一般社団法人オープンガバナンスネットワーク(OGN)がメンターとなりさまざまなアドバイスを行っています。実現に向けて、どのような支援ニーズがあるでしょうか。

佐藤「実現に向けたアドバイスは非常にありがたいですね。関係各所からは概ねよい回答をいただけていますが、前例のない事業なので難色を示されることもあり、道のりは困難です。これまで築き上げてきた地元企業や地域の人たちなどの人脈を活用して、これからも前向きに交渉を進めていくつもりです。」

受賞者からのメッセージ

――最後に、地方創生☆政策アイデアコンテスト2021への応募を検討されている方に向けて、メッセージをいただけますか?

佐藤「このコンテストを通して自分たちの活動を客観的に評価してもらえましたし、自信もつきました。すでに地方創生のための活動をしている方にとっては、活動内容を振り返り、後押しを得るいい機会になると思います。」

橋本「RESASを使った分析や考察を通して、見えにくかった価値がわかるようになったのは大きな収穫でした。私たちのようにすでに活動しているチームはもちろん、まだ活動していないけど未来に向けてアイデアを考えている方は気軽に応募してほしいです。一歩踏み出すことで何かが変わることもあります。」

――ありがとうございました。
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