受賞者インタビュー

過去受賞者に、本コンテストへ応募したきっかけや受賞後の活動についてお話を伺いました。
今年度応募を考えていらっしゃる方は是非ご参考にしてください。

地方創生☆政策アイデアコンテスト2022
官民連携の部 優秀賞受賞!

ふるさと納税を経由したワーケーションの導入 コミュニケーションハウスを用い、
地域交流の強化を目指す『地域交流でつながる、将来の移住者たち』を提案した
本郷高等学校/本の鳥100 井上 煌平さんに
政策アイデア実現に向けてのヒストリーや今後の展望を伺いました。

地方創生☆政策アイデアコンテスト2022 官民連携の部 優秀賞を受賞された本郷高等学校/本の鳥100 井上 煌平さん、当コンテストで井上さんが提案した政策アイデアの実現について、既存事業との連携や更なる事業展開の可能性を検討されている、青森市(連携推進課、課長)の高坂 和磨さんと(連携推進課、主事)宍戸 浩起さんの3名にインタビューしました。
青森市が井上さんの政策アイデアに興味を持ったきっかけや、井上さんが自身の政策アイデアに込めた熱い想いに迫ります。

地方創生☆政策アイデアコンテスト2022応募のきっかけ

初めに、井上さんに地方創生☆政策アイデアコンテスト2022応募のきっかけを伺いました。

井上「社会部という部活に所属しており、先輩と一緒に別の地方創生に関する大会に参加したことがあります。地方創生はどの自治体にも合う万能な政策というものがないので、それを考えることは面白いと気づきました。RESASは、地域について調べる際に、データとして信頼性が高いと先輩から勧められたことをきっかけに知り、2021年度にたまたまこのコンテストの募集を見つけて初めて応募しました。2022年度は2回目の応募でした。」

―――なぜ今回は青森市を分析対象としたのでしょうか。

井上「部活をきっかけに中学1年生で地方創生に興味を持ち、中学3年生でこのコンテストを見つけてから青森市について考えるようになりました。私が住んでいるのは川口市(埼玉県)ですが、朝早ければ12時間近く東京都内の学校におり、川口市(埼玉県)では休日に少し過ごすという生活なので、強く愛着があるわけではありません。一方で、愛着があるというと、たまに帰る青森市(祖父母在住)の方が自分にとっては良い所だと感じています。青森市は少し前まであった店がなくなっていますし、鉄道も都市部に比べ少ないので、活性化する上でやりがいがある地域だと思い選びました。」

政策アイデア実現に向けてのヒストリー

まず、青森市の視点で井上さんの政策アイデアについて伺いました。

―――井上さんと青森市が連携を始めたきっかけは何でしたか。

高坂「地方創生☆政策アイデアコンテスト2022 最終審査会の前に、青森市のPR動画もしくは井上さんへの応援メッセージを送ってもらえないかと、内閣府より依頼を受けて動画を作成したことがきっかけで、井上さんの政策アイデアを知りました。」

―――井上さんの政策アイデアのどこに魅力を感じ、実現に向けてサポートしてみようと思ったのでしょうか。

高坂「ワーケーションや移住、空き家活用といった、青森市在住ではない方に興味を持っていただくことのできる内容であった点が大きいです。井上さんが提案している内容のすべては実現できないにせよ、何かしら部分的に青森市の政策として取り入れられる部分があると思いました。また、若い方の意見を青森市の取り組みに取り入れたら面白いという感覚的な部分もありました。」

続いて井上さんに、自身の政策アイデアが実際の政策として実現していくことについて伺いました。

―――青森市から政策アイデアの実現へ向けた支援を受けて、どのように感じましたか。

井上「元々ふるさと納税や移住支援に関心がありました。そこで、自分に関わりがあり、愛着のある青森市を対象に政策アイデアを考えたいと思いました。実は、はじめは政策アイデアを実現させたいと思って作ったわけではなかったのですが、青森市側からお話をいただいたときは、ありがたいと感じました。まさかここまで青森市にご支援いただけると思っていなかったです。いざ政策アイデアを実行に移すとなったときには、自分で考えた自信のあるプランなので、楽しそうだ、上手く進みそうだ、と感じました。」

―――実際に、青森市では令和5年度から体験型ふるさと納税返礼品として『古民家泊 癒しのワー ケーションプラン(3泊4日)』をメニューとして新たに取り入れ、申込者が、7月26日(水)~7月29日(土)の期間で体験されたと伺っています。
このプランは上手く進みましたか。(評判はどうでしたか?)

井上「まだ回数は重ねられていません。また、7月26日(水)~7月29日(土)の期間で体験に来てくれたのも自分の知り合いでした。今後進めていく中で、プラン申込者の要望に応えていきたいと思います。」

(写真:青森市訪問時の様子)

井上さん、青森市に政策アイデアの実現に向けてのヒストリーを深掘りしました。

―――ワーケーションプランの作成に当たり、井上さんが提案した元の政策アイデアから変更もあったと推察します。その中で井上さんの政策アイデアが青森市側の思惑とマッチした所、これは生かそう(残そう)と考えた所はありますか?

高坂「井上さんのプランニングにおける想いは残したかったです。ただ、行政としての制約、制度の枠組み、メリット・デメリット、経費投入の観点なども考える必要がありました。また、井上さんがプランを提案するだけでなく、それを実践できる場にもしたいとの想いもありました。そこで、青森市のワーケーション体験の現場に井上さんにも参加してもらいました。プランを作成した当事者として実際の体験の現場に参加してもらえたことは良かったです。」

―――実際にご自身が提案したワーケーションプランを体験してみての感想や考えはありますか。

井上「ふるさと納税を利用したワーケーションは、思っていた通りの素晴らしい形に仕上がっていたと思います。また、提案から実現までのスピードが速いと感じます。初めてお会いしてから少しずつ実現に向けて動いていくのかなと思っていたら、早い段階で形になり実現に至りました。青森市のパワーを感じました。」

―――青森市の動きは、確かにスピーディーだと感じました。政策アイデアの実現に向けて障壁は無かったのですか。

高坂「元々移住促進やワーケーション体験者の受け入れに充てられる予算があり、それらをうまく活用しました。また、スピード感の話をすると、地方創生☆政策アイデアコンテスト2022最終審査会時において、当時の青森市長から応援メッセージ動画をお送りしていたことで、初めから市長が井上さんの政策アイデアについて内容を把握できており、報告等に多くの時間を費やす必要がなかったこともあるかと思います。」

宍戸「また、青森市ではふるさと納税の返礼品に体験型のプランを組み込む仕組み自体は元々存在しており、ふるさと納税担当者のノウハウの蓄積があったこともスピード感をもって実現まで展開できた要因だと思います。」

―――井上さんの提案された、もう一つの政策アイデアである、空き家を活用したコミュニケーションハウスの作成については障壁が高いでしょうか。

高坂「権利関係、賃借の手続き等、空き家の利活用の難しさは多々あり、なかなかコミュニケーションハウスとして使うことのできる物件が見つかりません。ただ、井上さんの提案をきっかけに空き家利活用の重要性を再認識したので、次年度の構想を練っているところです。青森市での暮らしが実感できる地域に物件を確保できればと思っており、それに向けて動いています。」

―――ご自身の政策アイデアを振り返ってみて、井上さんから何か思うことありますか。

井上「地方創生☆政策アイデアコンテスト2022もきっかけとなり、地方創生に興味を持つようになりました。他の事例を調べる中で、やはり、移住人口増加も、関係人口増加も、前段階での繋がりが大切だと思いました。空き家を活用して整備した空き家(コミュニケーションハウス)を、地域交流の拠点にすることが実現したら、コアな繋がりの創出の場になりうると思っています。青森市のSNS等とも組み合わせ、ネット上の繋がりがワーケーション等を通じて定住に結びつき、リアルな繋がりができていくのかなと思います。空き家については、良い物件が見つかればよいと期待しています。」

(写真:青森市訪問時の様子)

政策アイデアの今後について

―――政策アイデアの実現に向けて動き出した、ふるさと納税を利用したワーケーションのプランを今後どのように広げようと考えていますか。

井上「自分のSNSで普及活動も行っていますが、まだ実を結んでいません。しかし、ふるさと納税を利用したワーケーションのプランというものは、頻繁にある取り組みでもないと思うので、ネットニュース等で取り上げられ人目につけばと考えています。また、青森市の地元の方との繋がりを通じて、青森市が良い場所だと感じてもらえたら良いと思います。」

高坂「取り組みの方向性は間違っていないと思っています。ただ、井上さんの提案とは別の、元々実施していたワーケーションプランは旅費やレンタカー代も助成するプランになっています。その既存のワーケーションプランと井上さん提案の3万円支払うワーケーションプランを来訪者が天秤にかけたとき、既存の助成が受けられるワーケーションプランが選ばれる傾向にあると考えます。そのため、井上さん提案のふるさと納税ワーケーションプランが選ばれる工夫が必要で、来年度、ワーケーションのリピーターには井上さん提案のふるさと納税ワーケーションプランを選んでもらえるようなPRを打つ等、工夫する必要があります。」

井上「ふるさと納税で3万円を高くはないと思ってくれる方は一定数いると思っています。ただ、現状は、ターゲットの客層が明確でないと感じます。この客層を狙うと決めて、集中的にアプローチできれば申し込みは増えるのではないでしょうか。」

高坂「モノ消費とコト消費の考え方だと思います。コト消費を求めている層へのアプローチが必要だと考えます。特に30代以下の若年層で、働きながらも地域活性化に貢献したいと考えているリモートワーカーを狙って進めてきています。ターゲット層に向けたプラスアルファのアプローチ、コンタクトできる何かがあれば良いのだろうと思います。」

―――青森市でしかできない経験を付与できれば良いのでしょうか。

高坂「今も、雪かき体験ができるというプランを作成しています。理想的なストーリーは、除雪作業が難しい一人住まいの高齢者の住宅で雪かきをしてもらい、住民も助かり、自らも貴重な体験ができる、双方 WIN-WINのメニューを用意することです。」

高坂「我々青森市職員はすでに青森市に住み生活をしているため、外から見た青森市の良さに気づかないケースがあります。青森市に住んでいないからこそ気づく、青森市の良さがあるはずです。いろいろな土地の方と話しているうちにアイデアをもらうことがあります。」

(写真:青森市訪問時の様子)

官民連携のメリット

―――最後に、地方創生☆政策アイデアコンテスト2022 官民連携の部で優秀賞を受賞された井上さんと青森市のお二人より、「官」と「民」が連携することのメリットをお教えいただけますか。

井上「私は青森市から見ればよそ者で、まだ社会にも出ていない学生という立場なので、青森市職員とは対極に近い存在だと思います。そのような学生のアイデアでも青森市の職員の方がスピード感をもって進めていただけることで、フレッシュさが活きる政策案になることがメリットだと思います。」

高坂「官民それぞれのリソースを提供しあって、双方がメリットを享受できる関係が構築できると理想であると思います。井上さんからの提案で、我々も成功体験を得ることができました。また、井上さん以外の大学生や高校生と取り組みを進めることも増えています。さらに、民間企業や諸団体の提案も受け、行政にはない資源をどんどん取り入れているところです。青森市では2023年7月から「公民連携デスク」を立ち上げました。井上さんの提案アイデアが実現に向けて進んだ成功体験も一つのきっかけとして、始まった施策だと思っています。井上さんには感謝しています。」

宍戸「ひとつの繋がりを持てば他の繋がりにも結び付く点がメリットだと思います。青森市役所にインターンシップとして受け入れた青森市の高校生や大学生と、青森市に来ていた井上さんが情報交換をしているのを見てきました。青森市と井上さんの関係にとどまらず、他の繋がりにも広がればと思います。」

―――官民が連携して、一人の高校生の政策アイデアを、実際の政策に落とし込み実現に向けて取り組んでいらっしゃる、井上さんと青森市の高坂様、宍戸様にお話を伺いました。ふるさと納税を活用したワーケーションプランがさらに多くの方に体験いただけることを願っております。本日はお忙しい中ありがとうございました!
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